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満月の夜に

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満月の夜は手放したいことを願うといいのだそう。
私が手放したいのは、彼女の最後の10日間の記憶。

日に日に弱っていって辛そうだった最後の10日間ばかり
どうしても思い返してしまうのだけれど、いつしかそれが薄れて
その前の19年間分の溌剌とした姿の方が思い返せるようになったとき
失った悲しみを本当に乗り越えられるような気がする。

亡くなる前日、一歩歩くとよろけてしまうほど弱っていた。
そんな時、つい、ウトウトと寝てしまった私はハッと起きると
彼女の姿が見えない。振り向くと私の頭の後ろで横たわっていた。
その後、息子が帰って来てごはんを食べている時も
夫が帰宅した時もよろけながら傍に寄っていく。
自力で立つのがやっとの体で。
後になってみたら、あれは最期のお別れだったのだと思う。

亡くなった日、「行ってくるね」と声をかける夫と息子に
小さな子猫のような弱い声で返事をしたのが最後に聞いた彼女の声だった。
その2時間後、喘ぐように息をした後に静かに呼吸をやめた。
命がしぼんで消えていくように彼女は逝き、それを私は見届けた。

眠るように横たわっている彼女がいるうちに
私は彼女の全てのものを片付けた。
毛の一本も残さないぐらいに掃除もした。
それは、姿がなくなってから片付けたらもっと辛くなると
どこかで思っていたからだと思う。

それでも、もう2週間経つのに家の中に彼女の痕跡はたくさんあって
どこからか見つかる細い白と茶の毛。
誰かがお風呂に入るとじっとお風呂の前のバスマットで待つのが彼女の日課だった。
それが邪魔で「どいて」と言いながらバスマットの端っこを使うのが癖になった。
今はバスマットが全部使えることが寂しかった。
大好きだった鯖の塩焼きを焼いてる時に今でも足元にまとわりついてる気がする。
まだ家の中にいるような気配を感じながら
こうして思い出しては悲しい気持ちと寂しさと懐かしさとが混じり合って
いつしか乗り越えられるのかもしれないと思う。


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遺影にした写真は9年くらい前のもの。
お腹がタプタプなほど太っていて、
朝になると必ず我が物顔でベットを占領していた頃。
小さかった息子と寄り添って寝ている写真。
お骨だけになったときに買ったカサブランカが枯れる頃には
きっと遠い世界へと旅立つだろうと思ったけれど
このカサブランカ、家中に香りを漂わせながら今もずっと咲き続けてる。
きっと、これから、カサブランカの花の香りは
彼女を思い出す香りになると思う。
思い出すときには、彼女が安心して逝けるように
涙は流さないようにしたい。

今日の満月は黄金色したきれいな大きな月だった。
彼女の大きかった瞳の色にも似た色だった。
きっと、願いは叶う。






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by Himawari_August8 | 2015-09-29 00:58 | Life | Trackback

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